伊藤千紘

やらずに後悔したくない

「慎重でビビリのくせに、変なところでネジが飛んでるんです。あまり人が思いきらないところで思い切ってしまうんですよね」

と言って、伊藤は苦笑いした。
2013年、トライアウトを経てRGJに加入。自転車を始めて1年にも満たず、それまでビンディングペダルさえ使った事が無い伊藤の行動が、周囲を驚かせたのは当然だった。

「たまたま女子のチームがトライアウトをやるってのを知って・・・RGJがどんなチームなのかも知らなかったけど、とにかく飛びこんじゃえ!って思って。力が足りないのは承知していたけど、強くなるには、そうなる為の環境に入った方が良いんじゃないかと思ったんです」

レース前のアップ中、集中した表情を見せる伊藤

そんな伊藤が自転車を始めるキッカケとなったのは、『サクリファイス(近藤史恵著・新潮文庫刊)』というロードレースを題材とした小説。

「本屋でたまたま目に入って。それを読んでロードレースというものに興味を持ちました。普通はツール・ド・フランスあたりから入るんでしょうけど、私はツールを知ったのはその後なんです」

その後、知人のクロスバイクを借りて乗っているうちに自分の自転車が欲しくなり、ロードレーサーを買ったのがRGJのトライアウトを受験する3ヶ月前。どれだけ伊藤の行動が思い切った事だったかはご理解いただけよう。

とかく女性は保守的と思われるが、「何事も、やらずに後悔するのはイヤなんです」と、きっぱり言い切る。

「新しい事があると、まずやってみようと思うんです。やってみてから考えようと。だから、失敗も色々ありますけどね・・・無茶って言えば無茶ですけど」

そんなノリで、昨年はエタップ・ド・ツールに参加してみた。ツアーで一緒に行った人達からは完走は無理と思われていたとか。

「それまで100km以上の距離を走った事が無かったから、『それでエタップ走るの?』って驚かれましたね。でも実際に走ってみると、想像していたほど酷ではなかったです。後半は脱水症状になってしまったんですけどね・・・高校の部活(ソフトボール)以来でした」

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