../head_img_slim
HOME > QNリーグ・女子とジュニアを考察する自転車コラム

2023年1月9日:ジュニアギアを考える

※初出:2022年10月22日QNリーグ第10戦「ツール・ド・はなわ」レースレポート

Qリーグ岡本は高校1年、Nリーグ工藤は中学2年とジュニア年齢の選手が現在、ポイントリーダーとなっていることもあり、ジュニアギアとコース選定について併せて書いてみたい。というのも、世界の自転車競技を統括するUCIより今年の6月に「男女ジュニアのギア比規制を2023年1月1日より撤廃する」という発表があり話題となった。

今までは、男女ジュニアが大会で使用できるギアは、最も重いギアでペダル1回転あたりの走行距離が7.93mになるようにしなければならない、となっていた。その規制が来年から無くなるのだが、この予兆は以前からあった。

先ずは、元プロ選手で現在は山梨県を中心に自転車レース普及活動をおこなうトム・ボシス氏のブログに以下のような記載があった。https://www.sisbos.fr/about-limited-gears/

<以下抜粋>
フランス自転車競技連盟(FFC)が昨日、2022年1月から、U17カテゴリーのギア規制を取り下げることを発表しました。U19の規制はすでに、2019年をもって解放していたので、U15を卒業すると、ギア規制が一切なくなるということになります。
※抜粋終わり


既にフランスでは一足先に若手選手のギア規制が無くなっていたのだ。しかし、そもそも何故ギア規制が設けられていたのか?というと、多くの方々がご存じのように「成長期に高い負荷をかけることが、若手選手の成長に影響をもたらすことが懸念されているから」というのがある。だが、これについてもブログには非常に判りやすく解説がなされている。

<以下抜粋>
ロードレース種目とトラック種目では100年以上の歴史のある措置であることに対して、マウンテンバイク、シクロクロスやBMXという、比較的に発展の新しい種目では規制が存在していませんが、特定の影響が観察されたことはなく、科学的な根拠が存在しないということで、近年はUCIをはじめ、ヨーロッパ各国はギア規制に対する考えを再検討しはじめています。連盟専任の医者の依頼のもと、「ギアを規制するより、ディレーラーの正しい使い方を教わった方がいい」という仮説をもとに、フランス自転車競技連盟が2019年にU19の選手6名に対する実験調査を実施したところ、規制されているレース(U19のみの場合)より、規制がされていないレース(大人と混走する場合)の方が、観察された最高ケイデンスが高い、という結果が明かされました。ようするに、ギア規制を設けることはそもそも、高ケイデンスでの運動を促しているわけではない、ということです。

その背景には、フランスは近年、トルク力が重視とされているタイムトライアル種目で世界レベルでの成績が悪かったことがあり、その原因の一つとして、ギア規制が挙げられていたこともあります。また、サッカーをはじめとする他のスポーツに見習い、自転車競技でも近年、ネオプロがプロ契約を結ぶ時期がどんどん若年化していることも注目されています。
※抜粋終わり


更にブログでも紹介しているように、東京オリンピックフランス代表GMとして来日したエマニュエル・ブルネ氏は「トルク力の向上を目的とする運動は、健康に影響をもたらすどころか、選手の成長の一環として必要不可欠な要素であり、自転車だけではトルク力の強化が不十分であることまで科学的に証明されています」というコメントもある。

一方で、コロナ禍で機材を手配するハードルが莫大的に上がったこともあり、UCIにおいても、この度の決定に繋がったのだと推測できる。

弊リーグでは3年前の初年度においてギア比制限を設け、対象とするシリーズ戦でギア比チェックをおこなってきた。しかし、そのなかで上記のような考えや流れを鑑みながら、一番気になったのは、普段から指定ギア比を使っていない状況を散見していたことだった。自転車に乗る若手選手と、その管理をする指導者や保護者がギア比の仕組みや利点を理解し普段からジュニアのギア比で練習からレース出場まで、通年走らせているのであれば問題がないのだが、ギア比規制のあるレースの車検直前になるとギアやホイールを交換するのを何度も見てきた。酷いケースだと、車検の前にホイールを検査員の目の前で交換し「大丈夫かどうか測ってほしい」と言われた時には、呆れて何も言えなかった。これでは、規制をしても意味が無いと察し、翌年度からリーグでのジュニアギア比制限を撤廃することにした。

ただし、リーグに登録している選手たちの多くは自転車競技への関心が高く、普段から理解したうえでジュニアギア比を基にして軽いギア走り、綺麗に回転を上がられる選手が殆どのため、そんな選手が他のギア比制限の対象外となっている選手と混ざって走っても大きな差にならないようなコース選定を考慮するようにしている。ポイントとしては、激坂や長すぎる登坂区間、踏まないと進まない下り区間が出来るだけ無い事と考えている。

この条件を踏まえると、回転でスピードをコントロールする術を自然に身に着けてもらいながら、ギアのチェンジを小まめにコントロールしながらレースを運ぶことを覚えてもらいたいと思う。

もちろんトルク力の向上を狙うような、しっかりとした軸を作る筋力増加トレーニングも非常に重要だと考えている、しかし自転車を始めたばかりの選手や、トルクだけに頼りやすい走り方をする選手にも自転車ならではのギアをコントロールする走り方を覚えるチャンスになると考えている。一方の極端にならないバランスの良い強化方法として、このギア比撤廃を期に今後もジュニアを含めた育成の方法を模索していきたい。

テキスト:QNリーグ事務局・須藤むつみ


コラムについての注意事項

QNリーグのコラムはテキストや写真など、全て無断転載・引用を禁止します。


 

お問い合わせはコチラ

こちらのコラムの転載や引用ご希望の際には、お手数ですが下記へメールにてお問い合わせください。

icon メールアドレスm-sudou☆jbrain.or.jp ※☆の部分を@にしてメールをお送りください。
icon メール宛先など題名に「コラム転載・引用の問い合わせ」とお書きいただき、リーグ実行委員会事務局の須藤宛にお送りください。


ページトップに戻る