2015ブータンMTBレースレポート:吉井玲香(Ready Go JAPANチームOG)

*DANTAK Open Mountain Baike race レポート
<レース概要>
主催:Dantak / Bhutan Olympic Committee
日時:2015年4月19日
場所:Bhutan : Thimphu-Paro-Drukgyel-Paro-Thimphu 
距離:120km all on road
参加人数:合計173名 うち女子8名 
レギュレーションなど:アップダウンのあるコースで、すべて舗装された道路。使用していい自転車は、タイヤサイズが 1.9インチ以上、マウンテンバイクのみ。
詳細:http://www.facebook.com/DANTAKOpenMountainBikeRace

<遠征協賛>
江崎グリコ株式会社・チームパワープロダクション

Ready Go JAPANチーム
NPO法人サイクリスト国際交流協会


<レースレポート>
朝8時スタートのこのレースのために前日から移動。前日のブリーフィングでゼッケンナンバーが配られた。去年スタートで落車が多かったため、今年は、あらかじめスタートの並び順を前のレースの記録などを参考に主催者側で決められていた。私は女子で1位をとったことがあるので最前列。あまりスタートが得意ではないので、周りの人に迷惑をかけそうであまり好きではない。

当日は、前日の大雨も完全に止み晴れていい天気。少しひんやりした空気もあるが、半袖。スタート3時間前にがっつりお米を食べて、準備する。ドリンクの中身は江崎グリコ株式会社様のクエン酸&BCCAをつめた。これは疲れがふっとぶドリンクでレース中大活躍する。ポケットにはワンセコンドを詰め込み準備万端。

7時前に会場に到着。アップを始める。いいぞ。足は軽い。というか自転車が良く走る。15分前にスタート地点に行くともうほぼ全員が並んでいた。私は何度も呼ばれていたらしい。はずかしい。。。間に合えばいいんだ。上着を脱いだりアームウォーマーをはずしたり、と最終準備をする。

※スタートを待つ出場選手たち

最前列に並ぶ男性陣は強靭ばかりだが、みな友達。日本でもそうだったが、ブータンではさらに狭い自転車業界。本当に知っている人しかいない。8時に4代キングの息子ダショージゲル(ブータンオリンピック委員会議長)によってフラッグがおろされ、静かな音のないスタート。スタートは慎重に、飛び出す男子を追いかける。フレッシュに、気持のいいスタート。自転車が軽い。先頭がよく見える。あれ、こんなに見えていたかな。去年。成長したということか?ティンプーの出口、バベサゲートまでは完全に先頭が見えた。

これから20km先のチュゾムまでは下り基調。一人旅にならないようにしよう。風はまだ出てないが、ここは効率よく走らないともったいない。緩やかな登りと大きなカーブの下りの連続、良く走り慣れた道だ。たまに知り合いに会う。車を止めていないので大きなトラックが怖い。

チュゾムからパロまでの約20kmは風向きが変わり、少し上り基調になった。ここも良く知った道だ。パロまで行ければあとは惰性で走れる。途中、私の隣の学校の生徒がたくさん応援に来ていた。なんだかうれしい。去年の折り返し地点でタイムを確認すると、1時間25分というところか、そんなにはタイムが変わらない。パロの街は車を泊めていないので、すごく危なかった。日曜日のいつもの街のにぎわいで人もたくさんいる。

パロを通り過ぎてあとはいつもの道だ。パロから折り返し地点ドゥゲルまで約18kmの間に何人ものブータン人の知り合いが応援してくれていた。道で手を振る人、がんばれーって叫ぶ人。うれしくて涙が出てくる。さあ、そろそろ男子の先頭が折り返してくるかと待っていたのだがなかなか折り返して来ず。ようやく上り始めた折り返し地点まであと5kmところのところで先頭がやってきた。さわやかに下っていく男子をぽろぽろと見つつ、少年グループと一緒に最後の坂を上っていく。この折り返し地点のドゥゲルには私の家があり、職場がある。まさに庭。私の家の前には警察と大家さん、学校の前には子供たちと先生方が応援に来ていた。自分のいつもの生活場所で、たくさんの人に頑張っている姿を見せることができ、たくさんの人に応援してもらい、本当にうれしくてうれしくて、テンションが上がり、つらさも吹っ飛ぶ。あと半分あることもどうでも良くなる。気持よくていくらでも走れそうな感じ。

ただ椅子が置いてあるだけの狭い折り返し。本当はチョコレートか何か欲しかったのだが、狭すぎてそんなこともできず、折り返し後は下りだ。晴れているからスリップの心配はなく、気持よく下っていく。下っていくと、ちょうどいい大きな人を見つけた。この人についていけば無駄な体力消耗せずに済む。パロの街まで降りてくると、誰かの応援の声が聞こえたが、街の中で車に気をつけながら、前についていくのに必死になっていたら誰だか確認もできなかった。少し進むと4人ほどの集団と合流し隊列をくむ。なんだかレースっぽい。直線の後のちょっとして上り坂で引き離すと誰もついてこない。あ、でも一人旅になってしまった。しかたない、チュゾムまでの我慢だ。ここで一つグリコCCDワンセコンドを注入し、気合い入れ直し。なんだか力が出てくる。不思議。気持よくどんどん走っていける。チュゾムまで行ければもう後一時間くらいだ。チュゾム到着11時15分くらい。ドゥゲルから約1時間しかかかってない。

※無事にゴールを果たす吉井

チュゾムからもまだまだ一人旅、あと一時間頑張ればいいんだ。と言い聞かせるが、本当に誰もいなくてさみしい。捕まえたのは2~3人というところか。マイペースに、でも、レースモードを切らないように集中して走る。栄養もしっかり入れる。そうして戻ってきたティンプーゲート!あとは高速道路を下るだけ。わーうれしい、戻ってきたあ!そしてクロックタワーでのゴール!よっしゃ!4時間30分きった!気持よかった。本当に大満足。迎えてくれたブータン人の友達、男子のトップ選手、自転車仲間。そして、去年卒業した生徒たち。わざわざ見に来てくれた。久々の再会と見に来てくれたこと、見せることができたことに涙。足はもうたてないくらいへとへとに使い果たした。けど、とにかくみんなに支えられたことがうれしかった。大満足、やり残したことはない。これだけの記録出せれば十分。

やりきった。私を支えてくれたのはブータン人の仲間たち、生徒たち。お世話になった人たちに良いところを見せることができた。今日は本当に良く足も動いたし、自転車もよーく走ってくれた。言うこと聞いてくれた。ありがとう。すべてに感謝する。

しばらくしてお腹ぺこぺこなことに気づく。BBS, Kuenselからの取材も受ける。学校の名前を宣伝しなくちゃ。今回のレースは私にとって特別だった。それはドゥゲルという場所を折り返し地点だったこと。子供たち、友達、同僚からたくさんの応援をもらえたこと。レースのつらさより、この応援のおかげですごくhappyだった。

※表彰式に並ぶ上位入賞選手たち

私の前にも後にも日本人の美術の先生として私の学校で働く日本人はきっといるけど、私のような自転車レースで活躍した日本人は後にも前にもいない。生徒やこのドゥゲルの人に対して私にしかできない感謝の表現の仕方がこの自転車レースだった。そう思ってこの1ヶ月気合いを入れて練習してきた。一人の日本人がいた記憶としてブータン人の中に残ってほしい。

※4代目ブータン国王の息子・ダショージゲル(ブータンオリンピック委員会議長)と吉井

※4代目ブータン国王の息子・ダショージゲルから祝福を受ける吉井

そしてもう一つのラッキーは、ダショージゲルから、肩をたたかれ、おめでとう!って言われたこと。まるで友達かのようにフランクに接してくれる。うれしくてうれしくてたまらなかった。本当にありがとう。女子で今年1年間 1位を守り続け、タイムも悪くない、男子と総合してもトップ10に入るということができるようになって初めて認めてもらえたんだろうな。これで最後のレースになってしまうかもしれないことがさみしい。こんなにきついことをなぜ続けるのか、それは誰にもわからないけど、やっぱり最後の達成感を味わいたいからなのかな。今の気持は、もう一度ブータンに戻ってきて、ツアー・オブ・ザ・ドラゴンに出ること。少し休んだらもう一度トレーニング再開するぞ。私の目指すところはツアー・オブ・ザ・ドラゴン。あの過酷な、クレイジーなレースをもう一度やりたい。

今回のレースもたくさんの日本からの応援、ブータン人の応援があって初めて達成できたことです。本当にたくさんの人に支えられました。すべてのことに感謝します。最後に、グリコ様のドリンクのおかげで本当に助かりました。レースの中で疲れがふっとび自身の力を余すことなく使うことができました。本当にありがとうございました。

(レポートおよび写真撮影:吉井玲香、編集:RGJチーム事務局)

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